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山内祥太

「第二のテクスチュア(感触)」


@TOH,Tokyo


2021.01.10 - 01.30


Collaborator: ARIKA
Photo: 竹村晃一
Installer: 有瀧 隼人
Graphic Design: 八木幣二郎


掲載レビュー
https://qjweb.jp/journal/47031/

掲載レビュー
https://bijutsutecho.com/magazine/review/23666

感動している時が人は一番幸せだから・・・
幸せなまま死にたいから・・・
諸星大二郎「カオカオ様が通る」より


「カオカオ様は通る」に登場する顔をフェイスシールドのような半透明のマスクで隠しているタパリ人の少年がこのセリフを発する。タパリ地方では感動しながら自死する死生観が人生からの解脱の方法とされている。
まさに「死ぬほど感動した」を体現しているのである。
彼らは日々暮らし、美しい風景と出会い、感動し、瞬間、自死に向かう。そして、このタパリ地方では若い者が美しいものを見ることは禁止されている、この少年はまだフェイスシールド越しの世界しか見たことがない。この地方では感動の自死が人生での最も素晴らしい使命であり、憧れでありこの土地での重要な価値観を示す。
対照的にこの話の主人公は顔を持たない。よって、自分が誰であるのかわからないため、あてのない自分探しの旅を続けている。読者である私たちもまたそうであるかもしれない。鏡を通して自分の姿を見てもそこに本来の自分の姿はけっしてみつけられないように。
カオカオ様の話を現代社会に向けた寓意として共感した山内は、諸星の世界観や物語を踏襲し新しい寓話を、この時代という皮膚に転写を試みる。
展覧会のタイトルにある“第二の”というのは我々の皮膚であり、衣服であり、共同体であり、また都市であると拡張して捉えることを想像させる。
SNSでの他人の強い思想や言動が自分の顔に問答無用にへばりつく感覚に息苦しさを覚えた山内は、顔を持たないスーツ男のように現世を抜け出し、カオカオ様を見てみたいという思いに駆られ作品制作という旅を始めたのだろう。
山内はカオカオ様に出会うことができるのだろうか?